◆拡大する代替肉の需要◆
”代替肉”
皆様はこの食品に対しどの様な感想をお持ちでしょうか?
代替肉に関してテレビやネットで名前を聞いたことがある程度の方もいれば、積極的に日常の食生活の一部に取り入れておられる方もいらっしゃるかと思います。日本においては知名度が高いとは言い難い代替肉ですが、世界各国では多様化する消費者ニーズに対応すべく代替肉の需要が非常に高まっています。現在、様々な分野において多様性を尊重する事の重要性が叫ばれるなか、食品業界においても家畜肉の代わりとなる食品に注目が集まるのは必然なのかもしれません。今回は代替肉に係るデータを参照しつつ市場の動向を見ていきたいと思います。
1.代替肉市場
(1)代替肉需要の背景
(2)現在の市場規模と今後の予測
2.変化する価値観
(1)代替肉を選択する人々の価値観
(2)多様化と食生活の変化
3.食品製造業としての対応
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1.代替肉市場
(1)代替肉需要の背景
まず”代替肉”とは、植物性タンパク質を原料として作られ、家畜肉等の実際の肉の風味に似せた食品の事です。レストランやファストフード、スーパーマーケットにおいても年々見る機会が増えており、日本においても確実に認知度を向上させています。
この代替肉が注目される背景として①世界的な食糧供給の問題・②地球環境の問題・③動物倫理の問題が挙げられます。
①世界的な食糧供給の問題
2050年には世界人口が100億人に達すると言われるこの社会において、世界的な人口増加により食肉需要も比例して増加するのは必然です。以下のグラフは農林水産省のサイトに掲載されている食肉需要の見通しです。直近の約30年間でさえこれだけの増加率ですので、今後は特に人口増加が予想される発展途上国における食肉需要増加が顕著だと考えられます。この地球上の資源は限られておりこのままの状態が続けば近い将来、世界的に食糧配給に係る問題が深刻化する可能性があるでしょう。
参照:農林水産省・(1)世界の食料の需給動向と我が国の農産物貿易 イ 食料需給をめぐる今後の見通し
②地球環境の問題
食品特に食肉と温室効果ガスは非常に密接な関係があります。以下のグラフはサプライチェーン全体で見た各種食品別の温室効果ガスの排出量です。食肉特に牛肉が生産過程で排出する温室効果ガスの排出量は他を圧倒しており、このまま何も対策を打たなければ将来的に人口増による消費量増加により更に排出量が増加していくと考えられます。
参照:Our World in Data・You want to reduce the carbon footprint of your food? Focus on what you eat, not whether your food is local
③動物倫理の問題
過去、特に高度経済成長期にはその生産性向上にのみ重点を置いたため、飼育される家畜の倫理的な扱いに対してはあまり着目されていませんでした。しかし価値観が多様化する中で”動物搾取からの脱却”という概念が普及し、動物愛護の一環として肉を食べないという選択をする人々も増えてきています。以下のグラフはFood Diversity社が実際に行ったベジタリアンの意識調査のデータです。特に欧米の方々の動物保護に対する意識が大変高く、多くの方が動物倫理的な観点からベジタリアンとしての生き方を選択していることが分かります。
参照:Food Diversity社・海外ベジタリアンに聞いてみた!“なぜベジタリアンになるの?”
https://fooddiversity.today/
2.変化する価値観
(1)代替肉を選択する人々の価値観
以下のグラフは、独立行政法人農畜産業振興機構(Alic)が実施した調査のデータを引用しております。地理や文化等を考慮して選定された8カ国の消費者にインターネットアンケート形式で実施された調査であり、大変興味深い内容です。更に詳細を知りたい場合は機構のサイトをご確認下さい。
参照:独立行政法人農畜産業振興機構・各国における食肉代替食品の消費動向
https://www.alic.go.jp/index.html
以下のグラフは、各国~各世代間での食肉消費習慣の違いに関するデータです。国別で見た際、特に欧米において食肉を食べない割合が高いことが分かります。欧米諸国は移民の方も多く多種多様な価値観が存在するため、宗教上の理由または動物倫理の観点から肉を食べない人の割合が高くなるのかもしれません。またインターネットや様々なコミュニティーを通じて新しい価値観に触れる機会の多い新しい世代になるほど食肉を食べない割合が高くなる点も大変興味深いところです。
参照:独立行政法人農畜産業振興機構・各国における食肉代替食品の消費動向
https://www.alic.go.jp/index.html
以下のグラフは、全く食肉を食べない人の理由に関する統計です。全般を通して各国とも共通しているのは、食べない理由の半数以上は”宗教上の理由・環境負荷への懸念・動物倫理”となっており、多くの人々がその固有の価値観に従いあえて食肉を食べない選択をしていることが分かります。このような食肉に対する価値観を理解することは、今後更に訪日外国人の増加が見込まれる日本における食品業界の将来を予測するうえで大変重要になることでしょう。
参照:独立行政法人農畜産業振興機構・各国における食肉代替食品の消費動向
https://www.alic.go.jp/index.html
(2)多様化と食生活の変化
以下のグラフは、出入国在留管理庁が令和4年3月29日に発表した在留外国人数に関する発表を参照しております。このコロナ禍の入国制限により近年は技能実習や留学での滞在が減少しましたが、永住者や特定技能等の中長期滞在者は増加しています。結婚や就職等により違う文化や価値観を持つ外国人の方が日本の社会に参加することにより、コミュニティー内では必然的に多様な価値観が育まれていきます。その多様な価値観に影響を受けた人々の食生活が、この先時代と共に大きく変化していく可能性は大いにあると考えられます。特に現代社会においてサスティナビリティの観点から食生活(特に食肉)を見直す人々が多く、今後は更に大きなムーブメントとして進化していくことでしょう。
参照:出入国在留管理庁・報道発表資料(令和4月3月29日)
https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00001.html
また先程参照した独立行政法人農畜産業振興機構のデータの中で、代替肉製品を喫食する層と喫食しない層を比較したグラフ(下記左側)があります。食に対する志向性に関する統計なのですが、代替肉を喫食する層はそうでない層と比べて明らかに”安全・菜食・健康”に関する意識が高いことが分かります。そのような志向性に対する意識が高い層が代替肉の需要を牽引しているようです。
また喫食頻度に関するグラフ(下記右側)は、代替肉喫食者層の1年前と比した喫食頻度に関する調査です。少なくとも1/3、多い国では1/2の回答者が喫食量が増加したと回答しています。新しい時代の多様な価値観が受け入れられていることに加え、技術の進化と共に製品クオリティが飛躍的に向上しており、代替肉が食事として”美味しくなった”ことも大きく関係している可能性があります。今後は時代の価値観の変化及び技術の進化により、更に代替肉ユーザーは増加していくかもしれません。
参照:独立行政法人農畜産業振興機構・各国における食肉代替食品の消費動向
https://www.alic.go.jp/index.html
3.食品製造業としての対応
現在、数多くの企業が代替肉市場に参戦し、市場規模は企業・ユーザー共に劇的に増加中です。ベジタリアンやヴィーガン、宗教上の理由から肉を食べることが出来ない方々にも食べて頂けるこの食品は、今後は更に市場規模が拡大していくことと思います。代替肉を使用したハンバーガーやハム等の様々な種類の製品が開発され、現在代替肉市場は大変魅力的なラインナップとなっています。現時点では資金力のある大手企業を中心に市場が動いている印象を受けますが、今後は需要の拡大と共に中小企業も代替肉市場に参加せざるを得ない時が来るかもしれません。
その来るべき時に備え常日頃から準備しておかなければならない事は、高効率化された生産体制ではないでしょうか。柔軟かつ効率的な生産体制が整っていなければ新しい製品に積極的に対応できず、市場参入の機会を逃してしまいます。多様な価値観や地球環境の変化により、ここ日本においても近い将来劇的な食生活の変化が引き起こされるかもしれません。様々な環境の変化に臨機応変に対応出来るよう、未来に向けて着実に効率化を進めて行くことが重要でしょう。
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